【連載】「高校の選び方」⑤〜連載の最後にお伝えしたいこと〜
教師として、また子育てを終えた保護者としての経験をもとに「高校の選び方」について、保護者と子ども両方に向け、イチから語っていただくシリーズです。
今回は最終回。生徒さん保護者さん両方に向けて、それぞれにとって大切なことをお伝えくださっています。田中先生からの連載最後のメッセージ、必読です!
【第5回】 連載の最後にお伝えしたいこと
学校選びについてお話を始めたのが、昨年の秋11月でした。そして、年を越して新しい年度を迎えようとしています。
各学校の最終学年を終えようとしている人は、4月からの新しい環境に期待と不安が交錯していることでしょう。でも、そんな気持ちになっているのは、みなさんがこれから何かを目指そうとしている証です。新しいことをするときに不安がない人はいません。また、大きな期待をもっていてもそれが思うようになるとは限りません。
いずれにしても、みなさん自身も、保護者の方々もいままでになかった大きな経験をすることになるでしょう。そんな期待をもって、自分の選んだ学校へ堂々と通ってください。
4月から1年かけて次のステップへの足固めをする人もいるでしょう。そんな人は第1話から読み直してください。進路の選択やこれからの学校生活について、ちょっとしたヒントが隠されているかもしれません。もっとも、私の学校へ足を運んでいただければ、いろいろな問いにお答えしたいと思います。本校は男子校ですが、男女問わずお待ち申し上げております。
今回はそんな気持ちを生徒として、学生として、社会人として、保護者として、そして教員として、経験してきた、みなさんより一歩先を歩いてきた、わたくしの経験からお伝えできることをお話したいと思います。
夢を語る
いま、私の勤める学校のある部屋に、私が小学校1年生の時に、その時の担任の先生からもらったお手製の賞状のような手紙を飾ってあります。そこには「・・・がんばりましたね。つぎの学年では、みんなのまえで発表できるようになりましょう!」と書かれています。
「んっ?」私のいまの職業は教員です。「人前で毎日発表」しています。生徒だけでなく、保護者のみなさまや受験生、受験生の保護者の方々・・・知らない人の前でも話すことはたくさんあります。
今では80歳も半ばを過ぎた、その時の先生に「そんな仕事に就くとはね~」とよく言われました。
私の半生を語ると、履歴書が何枚あっても足りない気がします。
よく『自分史』を書かれる方がいらっしゃいます。今までの自分の歴史を振り返ることも、ときにはいいことかもしれません。そして『未来予想図』を描くことも楽しいものですよ。自分はこれからどうなっていくのかな? もちろん、それが実現するとは限りません。
でも、それもいいじゃないですか。
「言霊」って知ってますか。「自分はこうなりたい」「こんなことをやってみたい」・・・言葉にすることで、その言葉に魂が宿る。そうなんです。「夢」は大いに語ってください。でも「夢」は変わるかもしれない。変わってもいいじゃないですか。「夢」を語ることが大切なんです。
「夢」は実現する。「思い」は、いつかは叶うのです。
さまざまな「夢」と学校
「夢」を実現するのは社会生活を送る時期になってからだけではありません。
家族の中でのちょっとした夢。みんなで旅行へ行きたいね。みんなで食事に行こうね。予定を立てなければ、どこにも行くことができません。事前にプランニングをして、目的地に行って、おいしいものを食べて、楽しんで。そして、帰ってきてからも思い出話をする。
学校での夢。部活動で試合に勝ちたいね。予選を突破して本選に出場したいね。地区大会で勝ち進んで全国大会に出たいね。コンクールで金賞を受賞したいね。練習は厳しいでしょう。大会やコンクールでは緊張するでしょう。本選で自分の思った結果が出ないこともあるでしょう。
社会での夢。希望する職業・職域に就きたいね。素敵な人とめぐり会いたいね。自分の家を建てたいね。
どんどん夢は大きくなり、それを実現するパワーも必要となってきます。
でも、そんな環境で生きていく力を得ていくところのひとつが「学校」なのです。
だから、自分の目で「学校」を選んでほしいのです。
「学校」を選ぼうとしているみなさん、そして一緒になって考えてくれるご家族。そんな「家族」に見守られている。でもいろいろな葛藤もありますよね。
学校は生きるための「栄養」をくれる
では、大人になった視点から・・・
18歳だ、20歳だのひとつの節目を迎えたときに「おとなの階段」をのぼって行く気持ちになるでしょう。と同時に、責任や義務も増してくるのです。
そんな風に言われると「おとなになるのいやだなぁ~」なんて思ってしまう人もいるでしょう。私もそうでした。22歳でいわゆる社会人になったときの印象は「これから、約40数年、こんな生活が待っているんだ」と思うくらい陰鬱な空気に包まれた記憶があります。逆に言うと、それくらい、小学校から中学校、高等学校、大学まで楽しかったのでしょう。もちろん、嫌なこともたくさんありましたが・・・
マージナルマン
「自我が完全ではなく、人生の選択における意思決定ができないような、大人になるために猶予されている時間を過ごしている状態の人」
そんな時期をだれもが経験するのです。
でも、そんなときに力を与えてくれたのが「学校」での思い出です。いや、そこで得た「なにか」です。なんと表現すればよいか。「ふつふつと湧いてくるなにか」です。多分、いろんな経験をしてきたのですね。授業だけでない、行事だけでない、部活動だけでない、「なにか」から学ぶものが多かったのでしょうね。
学校って、みなさんが思う以上に「あとになって効いてくる」んですよ。
そこをどう選んできたのか、選んだ学校でどう生活してきたのか、そこで得た財産をいかに大切にできるのか・・・
「おとな」になって「苦い思い出」とともに「栄養素」になってくれるのです。
保護者として
親となり、子と接するときに考えること、保護者視点から多感な時期の子どもに接するときの難しさ。これも誰もが感じることではないでしょうか。
多感な時期にある子ども(思春期やそれに近い時期)は、感情や身体の変化が大きく、自己認識や社会的な関わりが複雑になっているため、保護者に対して重要な期待をもっていることが多いです。
一方、自分の気持ちや経験が他の人には理解されないと感じることもあります。保護者には、その複雑な感情を理解し、共感してほしいという期待があるのです。感情が高ぶった時に「どうしてこんなことを感じてしまうのだろう」と迷ったり、不安を抱えている時に、保護者がその気持ちを受け入れ、優しく寄り添うことは非常に重要です。
すなわち、理解と共感が大切なのです。
また、思春期の子どもは自己意識が強まり、個人の空間やプライバシーを大切にするようになります。
保護者に対しては、自分のプライバシーを尊重してほしいという期待があります。もちろん、保護者には子どもの安全や健康を守る責任がありますが、無理に干渉せず、子どもの自主性を認めること、プライバシーと尊重が大切です。
そのプライバシーとの両立をもたらすのがコミュニケーションです。
子どもは、思春期になると親とのコミュニケーションが難しくなることがありますが、それでも保護者とオープンに話せる関係を求めています。子どもは、質問や悩みを話しやすい雰囲気を保護者に求め、困った時には自分の意見や感情を話すことができる場所を期待しています。特に、感情的な問題や人間関係の悩みについては、他の誰でもなく保護者に話を聞いてもらいたいと感じることが多いです。すなわち、開かれたコミュニケーションの場が必要なのです。
また、自由を求める一方で、まだ判断力や経験が不十分なため、保護者には適切な自由を与えつつ、責任も教えてほしいという期待があります。自分の行動に対する結果を理解し、選択肢を持つことで、子どもは成長していきます。
保護者は、ルールや限界を示し責任感を学ばせながらも、自由をもたせることが大切です。
一般に、思春期の子どもは、時に反抗的な態度を取ることもありますが、それでも保護者がしっかりとした指導をしてくれることを期待しています。無理に押し付けることなく、子どもの考えや意見を尊重しつつ、社会的なルールや大切な価値観を伝えてほしいと思っています。保護者の一貫した姿勢やサポートは子どもとの関係において信頼を深めていきます。実は、子どもたちは保護者に対して自分の成長を見守ってもらいたいという期待をもっています。保護者には、その成長の過程を温かく見守り、応援してくれることを期待しています。
この時期、自己肯定感が低くなりやすいため、保護者からの肯定的な言葉やサポートが非常に大きな力となります。子どもは自分の努力や成果に対して認めてもらいたい、褒めてもらいたいという気持ちを強く持っています。
そのため、保護者は励ましの言葉やポジティブなフィードバックを提示することが大切なのです。これらの期待は、子どもが成長していく過程での不安や試行錯誤から来るものであり、保護者がその期待に応えることで、信頼関係が深まり、子どもは安心して自分自身を発展させることができるのです。
保護者の成長と自己肯定感
育児の過程で親も学び、成長することもあります。
親は育児を通して多くのことを学びます。子ども一人一人が異なる個性を持っているため、親はその子に合った育て方を模索する中で、自分の価値観やアプローチを再考することが多いです。親が学び、柔軟に自分の育児方法を改善していくことで、子どもにとってもより良い環境が提供され、子どもの成長に好影響を与えることになります。
そして、親の自己肯定感が子どもにも伝わります。親が自分自身を大切にし、自己肯定感を持つことで、そのエネルギーや態度が子どもにも伝わります。親が自信を持って自分の人生を生きる姿は、子どもにとって非常に大きな影響を与えます。自己肯定感が育まれた子どもは、自分に対して肯定的な態度をもちやすく、社会との関わりの中で自己表現や自己成長をしやすくなります。
終わりに
高校選びからスタートした連載ですが、子どもたちが迷ったときに頼れる先生が身近にいることの大切さ。それが、家庭であり、学校であり、社会である。
子どもにとっての「学校」選びは、社会の中での「生き方」を学ぶ場でもあるかと思います。保護者のみなさまは、その「学び」を子どもたちよりも一歩早く経験されてきたのです。
保護者のみなさまは、自信をもって子どもたちと向き合ってください。
生徒のみなさんは、堂々と自分を表現してください。
そのために「学び」の場を大切に思ってくれることを切に願います。
(連載おわり)
◎著者紹介
田中 正勝 先生
(日本大学豊山高等学校中学校教諭 広報主任)
・民間企業から教員に転身。進学校や実業高校を経て、20年前に母校教諭となる。
・指導部主任や学年主任を歴任後、広報の責任者として11年。
・現在は書道部・スキー部顧問。
・日大豊山の学校パンフレットの題字「日大豊山」は田中先生による筆