【連載】「高校の選び方」【第1回】
教師として、また子育てを終えた保護者としての経験をもとに「高校の選び方」について、保護者と子ども両方に向け、イチから語っていただくシリーズです。
今回はその初回。高校とはどんなところなのかをご説明いただきました!
【第1回】 高校ってどんなところ?
「学校でなにをするの?なにができるの?」
「勉強?クラブ活動?友達づくり?」
「高等学校って?」
これからみんなが進む先にあるものは…
みんなが行くから「学校」に行くの?
みんなが行くから「高等学校」へ行くの?
でも高等学校ってどんなところ?
▪️現在、中学校からの進学率は98.8%
高等学校進学が一般的になったのはいつからなのでしょうか。
新制高等学校が発足して間もない1950年(昭和25年)の就学率は42.5%でした。この時点では高等学校進学がまだ半数以下の進学率だったことがわかります。1955年(昭和30年)になると進学率が半数を超え51.5%に。1960年(昭和35年)には57.7%、1965年(昭和40年)には70.7%、1970年(昭和45年)になると82.1%と進学率は、経済の成長とともに急激に伸びていきました。その後も上昇は続き、1974年(昭和49年)には90.8%と9割を超えます。2018年(平成30年)には96.3%に増加し、通信制も含めた進学率は98.8%です。中学校卒業後には、ほとんどの人が進学を選んでいることがわかります。現在も約99%の中学生が高等学校に進学している状況が続いています。
▪️高等学校の歴史
現在の中学生はそのほとんどが高等学校へ進学をしているのがわかりましたね。でもその昔は、みんなが行っていたわけではありませんでした。一部の人たちが特別な思いをもって進んでいた教育機関だったのです。そんな高等学校も、いろいろな歴史を積み重ねる中で、時代にあった変化を遂げてきました。
では、高等学校とはどんなところなのか、歴史を紐解いていきましょう。
江戸時代には高等学校の母体となる藩校がありました。1871年(明治4年)には文部省が設置されます。1894年(明治27年)になると高等学校令により高等学校が創設されます。1918年(大正7年)に高等学校令が改正。高等科3年尋常科4年の7年生が原則となります。1948年(昭和23年)になると、新制高等学校が発足。定時制と通信制課程の単位制高等学校が導入されたのは、1988年(昭和63年)のことです。1989年(平成元年)には、定時制と通信制の修業年限が4年から3年になりました。1993年(平成5年)になると、単位制高等学校の制度が全日制課程にも拡大します。2012年(平成24年)に、中高一貫教育高における単位数の上限を20から36単位に拡充。2015年(平成27年)になると、全日制と定時制課程の高等学校で遠隔教育が制度化されました。高等学校専攻科の修了者に対する大学編入学制度が創設されたのも2015年(平成27年)です。高等学校のあり方は、時代とともに変化していることがわかります。
▪️高等学校の種類
そんな高等学校を大きく分けると全日制課程、定時制課程、通信制課程の3タイプに分けられます。教育課程とそれぞれの違いが大きな違いです。現在、全日制の高等学校は全国に4,702校あり84.0%を占めます。一方、通信制の高等学校は257校で4.6%になります。
全日制高等学校とはどんなところ?
全日制の高等学校は、国立・公立・私立の3種類です。2020年度(令和2年)の学校数は合計で4,702校。公立が最も多い3,369校、次いで私立の1,318、国立は15校となっています。全日制高等学校は生徒数が全体の91.3%を占めているのが特徴。約301万人が全日制高等学校に進学しています。
全日制高等学校は、平日の日中に通学し、朝から夕方まで6時間程度の授業を受けるのが一般的です。春休みや夏休み、冬休みなど長期休暇があります。学年制※の学校がほとんどで、1年進級するためには条件を満たさなければなりません。
※学年制…各学年で定められたカリキュラムをこなしていくことで進級し学習していく方式。公立中学などで一般的。
定時制高等学校とはどんなところ?
定時制の高等学校は、公立・私立の2種類です。2020年度(令和2年)の学校数は公立が613校、私立は27校となっています。そのうち、全定併設の学校数は合計で472校。公立が445校、私立は23校です。定時制高等学校の生徒数は1953年(昭和28年)にピークとなった以降は減少し、2020年(令和2年)は約7万9千人となっています。
定時制高等学校は、中学卒業後に働くなどの様々な理由から全日制の高等学校に進学できない場合に、高等学校教育を受けられるために創設されました。現代では、無職の生徒が半数を超えています。学校生活や家庭生活に支援が必要な生徒が多いのが特徴です。学年制はクラス単位で授業を受け1年ずつ進級、単位制※では科目ごとに生徒が異なり必要な単位数を修得すると卒業となります。
※単位制…学校教育法で定められた単位数を取得することで卒業となる学習方式。
通信制高等学校とはどんなところ?
通信制の高等学校は、公立・私立の2種類です。2020年度(令和2年)の学校数は合計で252校。公立が78校、私立は179校となっています。独立校では、公立が7校、私立が110校。併置校では、公立が71校、私立は69校です。通信制高等学校の生徒数は、1948年(昭和23年)の9,000人から上昇し、2020年(令和2年)は約20万人となっています。
通信制高等学校は、全日制や定時制の高等学校に進学できない場合に、通信の方法を用いて高等学校教育を受けられるために創設されました。学校生活に支援の必要は生徒の割合が高くなっているのが特徴で、広域通信制(3都道府県以上で生徒募集を行なう)では66.7%と特に高くなっています。レポート・面接指導・テストによって単位を認定。単位の他に在籍期間や特別活動といった条件を満たすと卒業が認定されます。
▪️「学科」について
また、高等学校には「学科」の違いもあります。「普通科」と「専門学科(職業学科)」です。
半数以上の56.1%を占めるのが普通科ですが、次に多い38.2%が専門学科、残りの5.7%は総合学科となっています。専門的な知識や技術を学べるのが専門学科です。商業科、工業科、農業科、家庭科、福祉科、看護科、水産科、情報科、理数科、体育科、音楽科、美術科、外国語科、国際関係科など様々な学科があります。学びたいものをしっかりと見据えられた人には専門性のある高等学校は魅力ですね。
日本では多様化する生徒のニーズに応えられるように、様々なタイプの高等学校が存在しています
ひとくちに高等学校といっても、これだけの種類があるのですね。
みなさんがイメージする高等学校の種類は「公立」「私立」、「共学校」「男子校」「女子校」・・・くらいでしょうか。
中学生のみなさんにとって「何を学びたいか」と質問しても「まだわからないや」が答えとなる人も多いでしょうね。
でも、せっかく高等学校に行くのだから「高等学校に興味をもってほしい」です。
いろいろな種類の組み合わせの中に、みなさんにマッチする高等学校があるはずです。
人生のなかで「たった一度の貴重な三年間」をいかに過ごすか。
そして「その先の分岐点」になるのは「高等学校」です。
どんなところで、何を学べるのか。
将来の選択肢を広げるためにもぜひ参考にしてみて下さい。
次回は「いざ、高等学校へ行ってみよう」です。
気になる高等学校へも行ってみないとわからないことばかり。その学校の空気に触れてみましょう。
学校説明会や見学会で見るべきものは、聞くべきことは・・・
(第2回に続く)
◎著者紹介
田中 正勝 先生
(日本大学豊山高等学校中学校教諭 広報主任)
・民間企業から教員に転身。進学校や実業高校を経て、2003年に母校教諭となる。
・指導部主任や学年主任を歴任後、広報の責任者として12年(2024現在)。
・現在は書道部・スキー部顧問。
・日大豊山の学校パンフレットの題字「日大豊山」は田中先生による筆